ご挨拶

小樽文學舎会長 土屋 裕美

市立小樽文学館は、1978年(昭53)11月3日に開館しました。小樽グリーンライオンズクラブの創立10周年記念事業の一環として、同クラブを母体に関係者が集い設立期成会を結成、当時、全国でも稀な公立地方総合文学館として開館に至ったものです。 その後、設立期成会は発展的に解消し、1986年(昭61)6月6日、小樽文学館を物心両面で支えていく市民団体、小樽文學舎として生まれ変わりました。小樽文學舎は、これまで詩や、短歌や俳句、川柳、また小説、エッセイなどいろんなジャンルで創作活動を続けておられるサークル、結社などの垣根を超えた交流の場をもめざしていくこととしました。 小笠原克氏が、民間の有識者として初めて市立小樽文学館長として就任したのは1997年(平成9)4月のことです。小笠原館長は、小樽文學舎を核として、市民の活力を積極的に館に導入していくことを考えました。 こうして、小樽文學舎が主催し、同年9月、小樽文學舎では初めての「古書バザール」が開かれました。古書は市民を初め多くの人々から提供されたものです。このときの純益20万円をもとに、さらに寄金をつのり、当時130万円で古書店頭に出されていた小林多喜二の自筆書簡の購入を全国に呼びかけたところ、大きな反響を呼び、わずか2カ月で500人を超える人々から合わせて300万円もの浄財が寄せられるということもありました。 また、2000年(平成12)4月に就任した亀井秀雄小樽文学館長は古書バザールでも売れ残る各種の近代文学全集に着目、これらの全集を研究資料等に活用してもらえるところに寄付してはどうか、と考え、小樽文學舎のボランティアの皆さんのご協力をいただきながら準備を進め、3300冊の図書を韓国、国立木浦大学校に送りました。この寄付は大きな歓迎をもって受け入れられ、翌2001年2月12日には魯珍栄木浦大学校総長が、小樽文學舎への感謝状を携えて、小樽文学館に来訪されました。 その後、木浦大学校に「小樽文學舎寄贈図書室」(愛称「小樽文學舎の部屋」)が開設され、そして10月、小樽文學舎でツアーを組んで、木浦大学校を訪ね「小樽文學舎の部屋」を見学しました。こうして韓国との「市民レベルでの」(魯総長の言葉)学術・文化交流が始まったのです。 小樽文学館は、そもそも小樽市民の総意で、市民の手作りで開設された文学館です。そしていまも市民の理解と協力のもとに、活発な活動を展開しています。むしろ国際的な課題となっている市民主導の学術・文化交流の先陣を切っているといっていいでしょう。 今後も民間主導ならではの自由で多様な活動を展開していくために、小樽文學舎へ幅広い市民が参加してくださることを、心から期待しています。