小樽文学館

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投稿少年 小林多喜二

庁立小樽高等商業学校時代の小林多喜二

庁立小樽高等商業学校時代の小林多喜二


最近、小林多喜二の最初期の小説が、86年ぶりに「発見」された。
その作品「老いた体操教師」は、雑誌『小説倶楽部(しょうせつくらぶ)』大正10年10月号に懸賞小説の佳作当選作として掲載されたもので、商業雑誌に発表された小説としてはこれまで確認されたなかで最初の作品である。

 ながらく埋もれたまま全集等にも収録されなかったこの小説は、日本大学教授曾根博義(そねひろよし)氏の調査によって掲載誌とともにその全貌が確認された(曾根博義「雑誌『小説倶楽部』と小林多喜二?埋もれた小説「老いた体操教師」を掘り起こす?」『サンパン』2007年3月号)。
 
 本企画展は、小林多喜二の事実上の小説第一作といえる新発見の作品「老いた体操教師」をはじめ、最初期の作品を紹介しながら、作品の背景となった小林多喜二の学生生活(庁立小樽商業学校、小樽高等商業学校時代)を物語る資料を展示、また小林多喜二はじめ当時の文学を志す青少年の登竜門であった、投稿文芸雑誌の数々を展示し、それらが近代文学史上果たした役割を顧みるもの。

※「老いた体操教師」
主人公のT先生は、長屋に住む日露戦争の退役軍人。酒好きだが人がよく、生徒からも愛されている。髪は薄いのに顔中ひげだらけなので、「山火事」とあだ名されている。
T先生は、厳格な校長が着任することを知って、自分が解職となることを心配し、生徒に対する態度を改め厳しく接するようになる。その結果、生徒による排斥運動で自分が学校を追われてしまう。
庁立小樽商業学校で、小林多喜二の卒業後、保守的な校長に対して起こった排斥運動にヒントを得たと思われる小品。思いがけず生徒から学校を追われることになったT先生に寄せる同情がユーモラスに暖かく描かれた佳品。

主な展示資料
 「老いた体操教師」が掲載された雑誌『小説倶楽部』大正10年10月号
 「老いた体操教師」の草稿(下書き)と思われる自筆原稿3枚
 (いずれも、初めて公開展示されるものです)
 他に当時小林多喜二が作品を投稿して掲載された雑誌『新興文学』『極光』、愛読していた志賀直哉著『荒絹』、このころ描いた水彩画等、約100点を展示。

会期:平成20年1月26日(土)~3月30日(日)
場所:市立小樽文学館展示室
入館料:一般300円 高校生・市内高齢者150円 中学生以下無料
※会期中、高校生以上の入館者には冊子「小林多喜二全集未収録 小説『老いた体操教師』(解説・曾根博義)」を贈呈します(部数限定)。

関連行事
企画展記念講演会「初期の小林多喜二をめぐって」
・「小林多喜二最初期の作品と文芸雑誌」曾根博義氏(日本大学教授)
・「小樽高商軍事教練事件と小林多喜二」荻野富士夫氏(小樽商科大学教授)
司会 亀井秀雄(市立小樽文学館長)

日時:平成20年2月11日(月)17:00~20:00(夜間開館中)
会場:市立小樽文学館企画展会場
※要・入館料